上海の豫園で「小籠包を食べるならどこか」と聞けば、まず名前が挙がるのが南翔饅頭店です。1900年創業、九曲橋のたもとに立つ3階建ての老舗で、ミシュランガイド上海のビブグルマンにも掲載されています。

ただ、有名店ゆえに「行列がすごい」「観光地価格で割高」という話も同じくらい聞こえてきます。実際のところはどうなのか、平日金曜日の夜に豫園の観光も兼ねて訪ねてみました。

南翔饅頭店とは

南翔饅頭店(南翔馒头店)は、1900年に上海・豫園で創業した小籠包の専門店です。創業時の店名は「長興楼」で、1960年代に現在の名前に変わりました。

ルーツは上海郊外の嘉定区・南翔鎮にあります。清の同治10年(1871年)、南翔鎮の点心店「日華軒」の主人だった黄明賢が、大ぶりの肉饅頭を「皮を薄く、餡を多く、サイズを小さく」改良したのが南翔小籠の始まりとされます。その製法は「南翔小籠饅頭製作技芸」として国家級の非物質文化遺産に登録されており、秘伝の餡の配合は6代にわたって受け継がれてきました。

本店は九曲橋と湖心亭茶楼のすぐそばに立つ3階建てで、1階がテイクアウト専門、2階と3階がイートインです。2018年に全面リニューアルされており、店内は明るく清潔でした。豫園の庭園散策とセットで立ち寄れる立地が、この店のいちばんの強みだと感じます。

場所・アクセス

お店があるのは、上海屈指の有名観光地「豫園(よえん)」の中。
豫園自体も地下鉄「豫園駅」から徒歩数分とアクセス抜群です。周辺には多くの飲食店やお土産店が立ち並び、食事だけでなく散策や観光も一緒に満喫できるのが魅力です。

さらに、豫園を代表する絶景スポット「九曲橋」の目の前というロケーションにあるため、迷わずたどり着けるわかりやすい立地となっています。

混雑時の入店ポイントと店内の様子

店の前に着いてまず目に入ったのが、入口前に集まっている人の多さでした。噂に聞いていた行列かと身構えましたが、よく見ると様子が違います。並んでいるのはテイクアウトを買う人たちで、イートインの入口とは流れが別になっていました。

1階はテイクアウト専門で、店内で利用するより手軽さが人気なのかもしれません。
店の前の人だかりを見て「今日は無理だ」と引き返してしまう人もいそうですが、一度入口まで来てみることをおススメします。
店内への入店の列は別途あり、そのラインには人が並んでいませんでした。

私は金曜日の18時30分頃に到着しましたが、すぐに入店することができました。昼に来た時はもっと人が多かったため、ランチ時の方が混雑しているのかもしれません。

階段で上に上がると、広い店内にテーブル席がたくさん並んでいました。
入店はすぐにできましたが、中の混みあっている様子を見るとやはり人気店であることがわかります。

注文はアリペイで完結 写真付きメニューもあり注文が容易

席にはテーブルメニューが置かれていましたが、実際に使ったのはアリペイでした。バーコードを読み取ると注文画面が開き、メニューを選択していくだけです。これがとても便利でした。

中国語が読めなくても困りません。アリペイの注文画面にも料理の画像が表示されるため、写真を見ながら選べます。紙のメニューも写真付きなので、アプリを使わない場合でも指差しで注文できる構えになっていました。
海外から来た身としては、ここがいちばん不安になるところだと思います。結果としては、スマホだけで注文から支払いまで完結しました。

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注文はすぐにできたのですが、料理の到着には結構時間がかかりました。(30分くらい)
やはり混雑していたこともありますし、小籠包だから時間がかかったのかもしれません。

注文したメニュー

传统鲜肉小笼(6個)  40元(約936円)

最もノーマルな豚肉の小籠包です。
箸で持ち上げると皮が透けるほど薄く、それでいて破れません。レンゲに乗せて皮を破ると、思っていたより多くのスープが出てきました。豚肉の餡は締まっていて、肉そのものの味がしっかりします。脂っこさがないので、6個があっという間でした。

蟹黄灌汤包(特大・ストロー付き) 402元(約983円)

いちばんの目当てだった蟹黄灌湯包から書きます。運ばれてきたのは、手のひらほどもある特大の包子に、ストローが添えられたものでした。

食べ方はシンプルで、皮の中心にある穴にストローを差し込んで吸うだけです。よくストローを差すときに皮が破れスープがこぼれるケースがあるようです。真ん中の小さな穴に差すことで、外皮が破けることはなく、スープがこぼれる心配もありませんでした。

スープそのものは濃厚で、おいしいものでした。問題はそのあとです。スープを飲み終えたあとに残ったのは、中身のほとんどない皮でした。スープと一緒に蟹の身まで吸い取ってしまったのかもしれません。結果として、後半はほぼ皮だけを味わうことになりました。
名物として写真に撮る価値は十分にあります。ただ、「食べて満腹になる一品」ではなく「体験する一品」と捉えたほうが、期待とのずれが小さいと思います。

蟹粉豆腐 78元(約1,825円)

麻婆豆腐ではなく、カニみそ餡の豆腐です。
レンゲですくうと、オレンジ色のあんが豆腐にとろりと絡みます。辛さはまったくなく、蟹味噌のコクと磯の香りがやさしく広がりました。素材の味を生かした優しい味わいで小籠包が続いたあとの箸休めとして、ちょうどよい存在でした。
めったに食べられない一品だと思うので、注文してよかったと思います。

食後は幻想的な夜景へ。豫園の景色とともに味わう老舗小籠包

食事を終えて外に出ると、豫園一帯がライトアップされていました。

店の前には九曲橋が架かっており、橋の上から店の建物そのものを撮影できます。夜のライトアップされた姿はとてもきれいで、ここが夜に訪れる最大の理由になりそうです。料理の写真だけでなく、建物と池の景色をセットで撮れるのは、この立地ならではでした。

南翔饅頭店の本店は、「上海でいちばんおいしい小籠包」を探しに行く場所というより、1900年創業の老舗と豫園の景色をひとまとめに味わう場所でした。

価格自体は少し割高感があり、上海のローカル店と食べ比べてみたい、というのが正直なところです。

それでも、豫園を歩く予定があるなら立ち寄る価値は十分にあると感じました。歴史のある店で食事をして、外に出れば池と橋のライトアップが待っています。料理だけを目当てに遠回りして訪ねる店ではなく、豫園という体験の一部として組み込む店——そう考えると、この店の位置づけはすっきりします。

上海旅行の思い出の一つとして訪れる価値のあるお店です。